案内板には“80分・150分コースは登山道です。
整備と体力にご注意ください。”と書かれていました。
「いざ突入!」と意気込んで吊り橋を渡り、清流の音や岩場の眺めに気分上々!
そんな気分もつかの間、飛び込んできた光景は、本格的な登山道でした。
お散歩ハイキングコースではありません。
せっかく来たのだから、もっと楽しみたいなとの思い、森の奥へと険しい山道を頑張って進みました。
ふとひと息ついた時、そこは別世界でした。
森の静けさ、滴り落ちる雨のしずく、凛とした空気の中に鳥の鳴き声、時々通り抜ける風にゆれる木々の音、森を走るような霧の流れは、まさに大自然の中にたたずんでいる体感をしました。
しばし自然に身をゆだねていると、この場所では自分が、あまりに無力で小さく思え、森に、山に、受け入れられているような神秘的な気持ちになりました。
森の奥ゆえ人影もなく、静寂な屋久島の森を味わうことが出来ました。
途中では「仏陀杉」「蛇紋杉」「天柱杉」「母子杉」「ひげの長老」などの巨木たちも出迎えてくれました。
日暮れの時刻がせまり、残りの行程が読めず、焦りと不安の中を進み、やっと出口の看板が飛び込んできた時、「遭難しなくて良かった」とほっと胸をなでおろしたのでした。
2時間半のコースを4時間もかかりましたが、屋久島のありのままの自然を感じ、ここでしか味わえない森の体験が出来た喜びは、素晴らしい思い出になりました。
また初登山(トレッキング)も、いま振り返ればとても楽しかったので、次回は1日コースの「縄文杉」に挑戦してみようと思っています。
駐車場で帰り支度中、偶然にも一頭のヤクシカがトコトコと現れました。
角がりっぱな雄ジカは、入口の係員さんにエサをねだっているようなそぶりでした。
お互い恐れる様子もなく、係員さんも見て見ぬふりで、しばらくするとヤクシカは静かに森へ戻っていきました。
ヤクシカは、おしりとしっぽの白がとてもかわいらしく、目がくりくりしていたのがとても印象的でした。